いっぴきのくろいいぬはずっとじめんをほっています。
どこかにいっては戻ってきて 地面をほっては
わん わん わん
なんどとめても いうことをききません
わん わん わん
ささやくように よびかけるように ずっとじめんをほっています
なかまのいぬはききました
「たからものでもあるのかい?」
くろいいぬはこたえました
「そうさ、ぼくのいっとうたいせつなたからものさ」
さいしょは かすかな こえでした
それはどんどんつよくなります
わん わん わん
じめんのなかでないていたのに
わん わん わん
はれのひは わらうように
あめのひは はげますように
どんなひも
じめんのなかはてんきなんてかんけいないのに
はれも あめも すてきなひにかわって
いつしか なみだはとまっていました
わん わん わん
ひかりが みえます
わん わん わん
すこしだけ そとは こわいのに
わん わん わん
そっと かぜを だきしめて
かおを あげると
なきそうな うれしそうな こえ
「やっときづいたの」
きずも なみだも べろりとすべてなめあげて
やっと こいをする