いちこの週刊爆心地

「遅いな~、王子様。8年早く着きすぎちゃったかな~?」

 『プリキュアの敵になった大人(ぼく)たちへ』 Engage.02 「僕たちはプリキュアになれない」

プリンセスプリキュアを語るうえで

欠かすことのできない人物がいます。

 

それは七瀬ゆいの存在です。

 

メインキャラクターのひとりなので

アニメを見ていた方からは彼女の重要性、

そしてはるか達にとって大切な友人であることは

言及するまでもありませんが、

今回は別の視点から語っていきたいと思います。

 

さて、簡単にゆいのプロフィールの紹介から。

彼女はプリキュアではないけれど、

プリキュアとずっと一緒にいた

ごくごく普通な一般人です。

 

しかしながら、物語終盤に誰もが感嘆するような名言を残します。

 

 

「今まで夢を守ってもらってきたけど、それじゃだめだ。

 だって夢をかなえるのは自分なんだから。」

 「自分の夢だもん、叶えたいなら戦わなきゃ!助けてもらってばかりじゃダメだ!」

「一緒に戦おう!最後に夢を叶えるのは、自分だよ」

 

このアニメの特徴は、主人公だけではなく、

登場人物それぞれに夢があるのです。

 

主人公の敵方であるディスダークは、

その夢を叶えられないと絶望させることによって、

怪物に変えてしまいます。

 

七瀬ゆいの夢は「絵本作家になること」です。

その夢は何度かディスダークによって絶望させられ、

彼女は諦めようとしたこともありましたが、

何度もプリキュアに助けられて、

「自分にしか描けない物語」を書くことを

目標に努力を続けていました。

 

そして、終盤にプリキュアでしか破れないはずの

「絶望の檻」を破って、

同じく「絶望の檻」に囚われたみんなに語りかけます。

 

夢は鍵になるけれど、

扉を開けるのは自分の努力だよ。

 

上記のセリフを言ったときに、

みんなの胸に吸い込まれた砕かれたロッドのカケラは

それを気づかせてくれるための

きっかけでしかありません。

 

さて、プリンセスロッドは

なぜ砕かれることになったのでしょうか。

 

七瀬ゆいと同じく、

プリンセスロッドはずっと一緒に歩いてきた仲間でした。

 

このロッドがなければ、

プリキュアは技を使うこともできないため、

ピンチに陥ります。

 

そのピンチの状況を作り出したかったのでしょうか?

カケラがみんなに希望を与える展開を書きたかったのでしょうか?

 

きっと違うのではないかと考えています。

 

 

それではなぜ、あそこでプリンセスロッドが

壊れる必要があったのでしょうか。

 

それはきっと、プリキュアたちのことを伝えるのに

最適な役だったんだと思うんです。

 

僕たちはもう壊れてしまうけれど、

最後の力で、君たちがしてきたことがいかにすごいことか、みんなに伝えるね。

 

確かにきっとみんなが思っているように

「夢があれば努力できる」ってはるかたちみたく強くないよね。

 

僕たちはずっと見てきた。

 

はるかたちは強かった。とても。

でも、はるかたちは努力してきた。とても。

 

みんな、気づいて。

 

でもどんな夢だって、

そのためにした努力はみんなを強くしてくれる。

 

あ、

ゆいは気づいてくれた。

 

「今まで夢を守ってもらってきたけど、

 それじゃだめだ。だって夢をかなえるのは自分なんだから。」
「自分の夢だもん、叶えたいなら戦わなきゃ!助けてもらってばかりじゃダメだ!」

ゆい。

きみはすごく努力したよね。

この長いようで短い、戦いの中で

4回も敵に囚われて、それでも最後まで逃げようとはしなかったね。

最後は普通の人にはありえない、絶望の力に抵抗しようとしたよね。

 

そういえば、

僕のことを初めてプリキュアに伝えてくれたのは君だった。

 

あの時、あんなに強いプリキュアの夢の力でも、

ディスピアが作った絶望の檻は破れなかった。

 

君の強い夢の力を感じたよ。

プリキュアにも負けない強い、夢の力。

 

君がもし「私の夢も力になれないかな?」って言ってくれなかったら、

みんなを励まして、みんなの夢を応援しなかったら……。

 

ゆいがみんなのそばに居てくれて、

良かった。

 

ロッドはきっと僕達にも言ってくれる。

 

「きみは気づかなかった?

 朝早くした朝練も、夜更かしして描いた絵も、

 友達と切磋琢磨したゲームスキルも。

 ぜんぶ、君が努力と夢で扉を開け続けた未来だよ。」

 

「一緒に戦おう!最後に夢を叶えるのは、自分だよ」

 

ゆいの言ったセリフは、

もしかしてロッドの代弁でもあるのかもしれません。

 

そんなロッドの強い強い意志を感じました。

 

ううん、意志じゃない。

 

これもきっとこれは夢かもしれない。

 

プリキュアを守りたい、プリキュアの力になりたいという彼らの夢。

だから、自分が砕けてプリキュアに力を与えて欲しいという夢。

 

きっと、プリキュアを守るように

色んな人が立ちあがったとき、

きっとロッドは誇らしかったんじゃないかなあ。

 

「ねぇ、プリキュア

 見えるかい?

 これが、君たちが助けてきた夢の数だよ。」

 

 

七瀬ゆいは、確かに変身して、敵とは戦えない。

でも、はるか達は、ゆいをプリキュアの一人だと認めた。

 

僕たちも、プリキュアにはなれない。

でも、プリキュアに負けないぐらい、

キラキラ輝くことはできると思うんです。

 

それが七瀬ゆいというキャラクターが伝えたかった

「自分にしか描けない物語を描く」ということなんじゃないかなあ、

と思うのです。